分配金の確定申告
2つの種類の投資信託
投資信託の分配金に関する税制を考える場合、まず知っておかなければならないのは、投資信託には大きく分けて2つの種類があることです。それは、「株式投資信託」と「公社債投資信託」です。公社債投資信託には、投資対象が債券(国債、社債など)100%であるファンドが分類されます。一方、株式投資信託は、公社債投資信託以外のファンドを指します。つまり、1%でも株式に投資するファンドが株式投資信託です。しかも、実際に株式に投資しなくとも、そのファンドの約款の中に「株式にも投資できる」ことが謳われていれば、それは株式投資信託に分類されるのです。
因みに、近年もっとも人気がある毎月分配型「外国債券に投資するファンド」は、実際には債券に100%投資しますが、分類上は株式投資信託です。その理由は、公社債投資信託に分類すると「基準価額(ファンドの時価)が10,000円を下回っている時はそのファンドを販売することができない、分配することもできない」という計理ルールがあるためです。外国債券に投資する場合、為替レートの変動によって基準価額が10,000円を下回る可能性が十分にあることから、敢えて株式投資信託に分類されるように商品設計を行っています。保有する投資信託がどちらの種類のものなのか、投資信託説明書(目論見書)などで確認するようにしましょう。
公社債投資信託の分配金に関する税金
上記の事情により、公社債投資信託に分類されるのは、ほとんどが国内の債券に100%投資するファンドとなります。公社債投資信託では、受取る分配金の全額に対して、一律に20.315%(所得税15.315%、地方税5%)が課税されます。これは、源泉徴収されて課税関係が終了しますので、確定申告をする余地はありません。
株式投資信託の場合の分配金に関する税金
株式投資信託では、受取る分配金のうち普通分配金に対して20.315%(所得税15.315%、地方税5%)が課税され、源泉徴収されます。基本的には確定申告は不要であり、これで課税関係を終了させることができます。
株式投資信託の分配金を確定申告する効果
ただし、株式投資信託の分配金については、申告分離課税を選択して確定申告をすることもできます。確定申告をすると、株式や株式投資信託の譲渡損失との損益通算ができます。1年間(1月1日~12月31日)に、株式や株式投資信託を売却して確定した損失がある場合は、受取った分配金の金額からその損失金額を差引かれますので、源泉徴収された税金が還付されます。
また、総合課税として確定申告をすれば、課税所得の水準によっては「配当控除」として還付される場合があります。所得税は課税所得の金額によって配当所得の10%または5%、住民税は2.8%または1.4%が税額から差引かれます。分配金など配当所得を含む課税所得が330万円以下の人や専業主婦などで他に所得がなく、配当所得の合計が38万円以下の人は、総合課税で申告すると還付が受けられます。ただし、分配金を総合課税で確定申告すると、その分、所得が増加したものとみなされるため、配偶者控除の対象から外れて配偶者側では増税となったり、各種手当が停止される可能性がありますので注意が必要です。
なお、確定申告して受けられる「損益通算」「配当控除」は、両方を受けることはできず、どちらか一つを選択することとなります。
特定口座(源泉徴収あり)について
投資信託の販売会社では、「一般口座」「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」のどれかを選ぶことができます。このうち、特定口座(源泉徴収あり)を選択すると、株式や投資信託の譲渡損益のほか、投資信託の分配金や株式の配当金も自動的に損益通算されますので、損益通算を目的として確定申告をする必要はありません。ただし、複数の販売会社で取引した分を通算したければ、確定申告が必要です。