年に12回分配金が出る毎月分配型が脚光を浴びるなかで、分配金がない(0円の)ファンドもあります。分配金が0円だからといって、一概に良くないファンドというわけではありません。もちろん、運用成績が悪いことが原因で分配金が出せない場合もありますが、その他に、商品性格として出さない方がよいもの、運用方針として出さないものなどがあります。
年に12回分配金が出る毎月分配型が脚光を浴びるなかで、分配金がない(0円の)ファンドもあります。分配金が0円だからといって、一概に良くないファンドというわけではありません。もちろん、運用成績が悪いことが原因で分配金が出せない場合もありますが、その他に、商品性格として出さない方がよいもの、運用方針として出さないものなどがあります。
投資信託の分配金は、まず、ファンドに組入れている債券の利子や株式の配当としてその期に受取った収入(インカムゲイン)、組入れている資産の値上がり益(キャピタルゲイン)が分配してもよいお金(分配可能原資)となります。また、前期までの分配原資のうち分配せずにファンド内に留保しておいた分も、今期に分配することができます。しかしながら、投資対象がインカムゲインの少ないもの(新興企業の株式など)であったり、投資対象が長期にわたって値下がりしていたり、ファンドの運用がスタートして間もない場合など、原資がなく、分配ができないことになります。
日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの株価指数に連動することを目指す「インデックスファンド」があります。インデックスファンドの使命は、ファンドが存続する限り、株価指数と同じ動きを続けることです。基準価額が上昇したからといって分配金を払出していては、値上がり分を配当するわけではない株価指数と基準価額の値動きが離れてしまいます。そこで、インデックスファンドでは、分配金は0円または年に1回10円~30円程度の少額で決算を迎えるのが通常です。
また、国内外の株式・債券やREIT(不動産投信)などにバランスよく資産を振分けて運用する「バランスファンド」も、分配金に適さないファンドです。バランスファンドでは、最初に組んだ資産配分を基本として、時間の経過とともに値上がりする資産・値下がりする資産があり、定期的に資産配分を基本に戻す調整(リバランス)を実施します。その時、値上がりして増えた資産を高値で売却し、値下がりした割安の資産に資金を回していくことになり、そこにこそバランスファンドの妙味があります。もし、ファンドが値上がりしたからといってその分を大きく分配してしまうと、安くなった資産にお金を回すというリバランスを実施できなくなりますので、バランスファンドも分配金を出すのに適さないファンドです。
値上がりするたびに分配金を払出してしまうよりも、値上がりした分もファンドの中で再投資をして信託財産全体の成長を目指す方が投資効率は良いという考え方があります。また、分配金を出すためには、組入れている株式や債券を売却してお金を作らなければならず、分配金額によってはポートフォリオが崩れることもあり、組み直す必要も生じます。それでは運用効率が悪いため、分配金を極力出さないことを方針とするファンドがあるのです。特段に受取った分配金の使い道がない、または、資産運用として財産の成長を目指すのであれば、そのようなファンドの方が適しているといえます。
なお、あらかじめ「分配金を出さない」と決めることができるのはファンドがスタートしてから3年目までです。したがって、単位型(途中で追加購入や自由に解約はできないタイプ)のファンドで信託期間が短いものには「無分配型」がありますが、追加型(時価で自由に購入・売却できるタイプ)の通常の投資信託は信託期間が長く「無分配型」とすることができません。したがって、正式には、一応どのファンドも分配をすることになっていますが、決算を迎えるごとに0円(事実上の無分配)や10~30円などの少額に抑えるといった運用をしています。過去の基準価額を見て、右肩上がりに大きく上がっているにもかかわらず、分配金が少額のファンドは分配を極力抑えることを方針としているファンドということになります。