インデックスファンド
投資信託の運用方法は大きく2種類に分けられます。ファンドマネージャー(運用担当者)が調査・分析して選んだ銘柄に投資する「アクティブファンド」と、あらかじめ決められたインデックスと同じ動きをすることを目指して運用される「インデックスファンド」です。
インデックス(Index)とは指針・指標という意味ですが、投資の世界では、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など市場全体の動き、相場の大きな流れを見るために集計された指数をインデックスと呼んでいます。アクティブファンドではこのインデックスを競争相手としますが、インデックスファンドでは追随する対象として設定されます。
なお、日本株では日経平均株価やTOPIXのほかに、食料品・化学・機械・金融など業種別の指数や大型株・小型株など株式の特色ごとに指数があります。同じように、海外の投資対象でも、米国株式ならニューヨークダウやナスダック指数、ブラジルならボベスパ指数など、また、世界の先進国の株式を集計したMSCIワールド指数、新興国株を集計したMSCIエマージング指数など、各国証券取引所や民間業者が算出したインデックスがあります。
インデックスファンドの存在する意味
上級者やプロにとって
投資の初心者は「プロが指標に勝つように運用するアクティブファンドの方が、単に指標と同じ動きをするインデックスファンドよりも魅力的」と考えがちです。しかしながら、指標に勝つことを目指すということは、逆に指標に負ける可能性もあるのです。その不確実な点、ファンドマネージャーの力量に依存することもリスクの一つと考えて避けたいと思う投資家は、インデックスファンドを好みます。また、機関投資家などプロの投資家は、ファンドを保有しつつ株価指数の先物やオプションなどのデリバティブを使って、自分で市場リスクをコントロールすることがあります。その場合、指標に対して上振れ・下振れの可能性があるアクティブファンドよりも、ほぼ確実に指標と同じ動きをするインデックスファンドの方が、リスク度が計算しやすく使いやすいのです。
そういった意味があるので、インデックスファンドのファンドマネージャーは、とにかくファンドを指標と同じ値動きにさせることに専心しますし、それを求められています。日経平均株価が10%上昇した時に、日経平均インデックスファンドAが9.9%値上がり、ファンドBが12%値上がりしたとすると、より一層値上がりしたBの方が優秀なのではなく、日経平均の動きに近かったAの方が優秀なインデックスファンドということになります。
初心者にとって
インデックスファンドのメリットの一つは、ファンドの値動きが分かりやすいことです。例えば、日経平均株価ならば、テレビや新聞、インターネットなどでその動きをよく耳にします。日経平均株価が1%上昇したと聞けば、保有する日経平均に連動するインデックスファンドも1%上昇したと考えることができます。また、アクティブファンドよりも販売手数料(申込み手数料)や信託報酬が低いのが通常ですので、投資信託を使った資産運用の第一歩をインデックスファンドから始める投資家も少なくないと聞きます。
インデックスファンドの運用方法
単純に指標と同じ動きをすればよいのでインデックスファンドの運用は簡単と思われがちですが、単純なものから複雑なものまでいくつかの投資手法がありますのでご紹介します。どれも、プロとしての運用会社の手腕が重要であることが分かると思います。
完全法
これは、指標に採用されている銘柄をそのまますべて保有する運用方法です。例えば、日経平均ならば225銘柄を保有することになります。ただし、この運用方法は、信託報酬分だけ指標に付いていくのは難しく、信託報酬の高いインデックスファンドはパフォーマンスがその分圧迫されます。また、大口の解約が出た時に保有銘柄を維持するのが難しく、先物などでカバーしたり、企業にスキャンダルなどがあった場合に指標から外れるタイミングを用心深くウォッチする必要があります。そのような注意が必要な局面では、この完全法であっても、問題銘柄を外すこと(日経平均に連動を目指す場合でも、223~224銘柄で運用すること)もあります。
層化抽出法
これは、指標を構成する銘柄群をグループに分類して、そのグループごとに一部の銘柄を保有することによって、指標と同じ動きを目指そうというものです。例えば、日経平均採用の225銘柄を業種別グループに分けて、業種ごとに銘柄をいくつか保有します。どの銘柄を選ぶときちんと指標に追随できるかは、大変高度なプログラムを組んだシステムで計算・抽出されます。完全法は売買する銘柄が多く、取引コストもかかりますが、この方法であれば銘柄数が少ないためコストも低く抑えることができるのがメリットです。この方法は、債券のインデックスに連動するファンドの運用によく使われます。
特殊な債券を使う方法
例えば、日経平均株価と同じ動きをする特殊な債券を発行し、それをファンドで保有します。この方法では、指標に連動することが約束されている債券を買うので、連動性が崩れるリスクはなくなります。この場合の注意点は、その債券を発行する会社が破たんした場合に、債券が大きく値下がりしたり償還ができなくなる信用リスクがあることです。ただ、こういった運用をするのは、世界的な規模を持ち、財務状況の強い有名な外国金融機関がほとんどです。