初心者の方がよく「儲かる投資信託はどれですか?」と質問しますが、これはあまり良くない質問です。
例えば、日本株に投資したい時に「儲かる銘柄はどれですか?」という質問ならば分かります。それは、日本株という一つの市場の中で、「収益的に有利であり、注目を集めそうな企業はどれですか?」ということが訊きたい質問です。では、同じような質問の仕方を投資信託でしてはいけないのはなぜでしょうか。それは、投資信託自体が投資の目的(最終的な投資対象)ではなく、あくまでも投資のための「ツール、手段」だからです。
例えば、「アメリカに行きたいのですが、アメリカのどの都市が楽しいですか?」という質問が、「日本株で儲かる銘柄はどれですか?」に相当します。それに対して、「儲かる投資信託はどれですか?」という質問は、「どこへ行ってもいいのですが、飛行機、船、徒歩、自転車のどれで行ったら楽しいですか?」という質問に似ています。つまり、どこに行きたいのか、旅行の期間はどれくらいなのか、予算はどれくらいなのか、旅行者は若いのかシニアなのか…など、様々な条件によって旅行プランが異なるように、投資の目的や想定する期間、保有金額、リスク志向度などによって適切な投資信託は異なるのです。
もし、販売会社(証券会社や銀行など)の店頭で単純に「儲かる投資信託はどれですか?」と訊けば、「外国債券に投資する毎月分配型のAファンドに人気がありますよ」などと最も売れている投資信託をおすすめしてくれるケースが多いと思います。しかし、そのファンドを買うと「毎月の分配金はもらっても使い道がない、再投資して財産の増加を目指したい」とか「国内の株式がこんなに値上がりしているのに、Aファンドは値上がりが緩やかすぎる」など、自分の資産運用の指向とは不一致な部分が出てきてしまうかもしれません。それは、シニア向けのツアーに若者が参加すれば楽しめないのと同じです。適切な投資信託を購入するためには、旅行のスタイルや目的地、つまり、自分の資産運用のスタイルと投資対象資産を決めてから、個別の投資信託を選ぶステップに進んでください。