価格・値段の決まり方
投資信託の時価は「基準価額」
投資信託の時価、値段を「基準価額」といいます。日経新聞などでは「基準価格」と書かれていますが、それは間違いです。その違いは、需要と供給のバランス(買う人と売る人の意思)で決まるのが「価格」であり、株価がその典型で、高くても買いたい人が多ければ値上がりする性質のものです。一方の「価額」は、そのモノの実質的な資産価値を表わす金額のことです。投資信託の時価は、ファンドが保有する資産の価値を集計して出されるので「基準価額」なのです。
なお、投資信託を取引所に上場させて流通させるETFには、取引する時に使う価格(需給関係により取引所で決まる価格)とファンド自体の価値を表わす基準価額(組入資産の価値変動で決まる価格)の2つの値段があります。一般の投資信託は「基準価額」で、購入・解約をします。
基準価額の計算方法
投資信託の基準価額は、毎営業日に、以下の手順で計算されます。
- 保有するすべての資産(株式など)の時価を合計します。
株式などの時価は、基準価額を計算する時点の直近の市場の終値を使います。また、保有している株式から配当が、債券から利子が出たら、それも加算します。
- 信託報酬や運用にかかるコストを差引きます。
信託報酬は運用会社や信託銀行などがファンドを運用・管理する対価として受取るものです。「純資産総額に対して年率1.08%」などと年率で表示されています。これは、前日の純資産総額(ファンドの総資産)にこの率を掛けて365日で割ったものを1日分として、毎日差引かれます。その他、監査費用などもここで差引きますが、大きな出費は価額の連続性を保つように分割して計上されます。ここで出される計算結果が最新のファンドの総資産であり、ファンドの規模を表わす「純資産総額」として公表されています。
- 2で算出した純資産総額をファンド全体の口数で割ります。
基準価額は、「1口あたり」または「1万口あたり」として発表されていますので、その単位あたりの資産額を計算します。ファンドが設立されたときに、1口=10,000円のものは「1口あたり」、1口=1円であったものは「1万口あたり」が使われます。
投資信託の注文(購入・解約)と基準価額の関係
投資信託は、「約定日の基準価額」で購入・解約します。約定日とはその注文が成立する日のことですが、注文を販売会社に申込みした日と約定日の組み合わせパターンは2つあります。
国内の資産に投資するファンド:申込み日の当日が約定日
国内の株式や債券などに投資するファンドは、本日(締切り時刻は14時~15時が多い)注文した分は、本日が約定日となります。したがって、申込み日当日の基準価額が適用されますが、その基準価額は、当日の市場の終値で計算されます。
海外の資産に投資するファンド:申込み日の翌営業日が約定日
海外の資産に投資するファンドは、本日(締切り時刻は15時が多い)注文した分は、翌営業日が約定日となります。これは日本と投資対象である海外に時差があることと、為替の換算があるためです。基準価額の計算は、基本的に、約定日時点で最新の終値と約定日の為替レートを使って行われます。通常(連休がなければ)、注文申込み日の市場の終値と翌日の為替レートとなります。例えば、米国株に投資するファンドを9月4日15時までに注文すると、翌日9月5日の日本時間の明け方に終了する株式市場(米国の日付では9月4日)の終値と9月5日の午前10時ごろの為替レートを掛け合わせて計算された基準価額をもって、購入や解約をすることになります。
このように、日本株に投資するファンドについては、注文する時点でリアルタイムに動いている市場の様子を見ることができます。したがって、今日の基準価額が直近(前営業日)の基準価額より高いのか安いのか大まかに予測することができます。ただし、市場が終わる前に注文を出さないと締切時刻に間に合いませんので、あくまでも大まかに…です。一方、海外資産に投資するファンドでは、世界のどの国に投資しているかにもよりますが、ほとんどの市場が注文締切時刻より後の時刻に終了し、為替は翌日のものを使うので、基準価額がどの程度になるのかはまったく予測ができません。これをブラインド方式といいます。