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売り時

インターネットで有識者等のコラムを見ると「投資信託は長期投資するもの」と述べられています。では、長期とは一体何年でしょうか?「1990年から20年以上も日本株に投資しているのに儲かっていないけれど…」という声も聞こえます。

まず、押さえておきたいこととして、「投資するお金が長期投資が可能な、フリーな資産であること」が重要です。もし、3ヵ月後に支払いが決まっているマンション購入のための頭金で投資をしたらどうなりますか?3ヵ月後に値上がりしていれば問題ありませんが、もし値下がりしていた場合は…。支払期日にはお金を用意しなければなりませんから、損失が出ていてもそこで投資は終了(投資信託は売却)です。頭金に不足してしまった分は、別のところから手当てするか、それができなければマンション購入をキャンセルしますか?このように、待てば回復しそうな局面であっても待つことができない状況、つまり投資資金に時間の制限があることは、価格変動リスクを全面的に被ることになるもっとも大きなリスクといえます。ですから、長期投資という言葉は、「長期投資できる資金で投資する」という意味が第一義であると考えてください。

それを踏まえて、投資スタンスの違いとともに「投資信託の売り時はいつか?」を考えます。「長期投資は何年か?」その質問の答えは、1ヵ月でもあり30年でもあります。

売買益の獲得を狙うスタンスの場合

投資は「安く買って高く売る」と利益が出ます。投資信託も投資である以上、例外ではありません。売買益を得る目的で、値上がりが期待できるファンドを選んで購入したのであれば、購入した動機となる「値上がり材料(成長性があると考える理由)」が変化するまで売却する理由はありません。例えば、新興国の株式に投資するファンドを買って保有していたところ、十分に成長して先進国の仲間入りを果たしたとか、逆に紛争が始まり経済成長シナリオが崩れたと思える場合などです。その他にも売り時を挙げるとすれば、「(慎重に吟味して)もっと魅力的と思われる別の投資対象ができた時」「そのお金を別の用途に充てる必要ができた時」といえます。

数倍という大きなリターンを狙うよりも、リスク管理を重視したい場合は、目標とする利益を設定する方法があります。ファンドを購入する時に、「この投資は30%の収益を目標とする」などと具体的な数値を決めます。それを達成した時に売却します。ただし、利益を確定する目標値を決めるのならば、損失の限界も決めるべきです。利益の上限を定めたのに、もっと大きな下値リスクを採るのはバランスがよくないからです。したがって、自分で決めた上下両方の値段(利益の水準と損失の水準)に達した時が売却時期です。この売却方針は、それ以上にファンドの基準価額が上がると若干悔しい思いをしますが、逆に、相場の過熱感からの大きな反落や長期にわたる損失状態(塩漬け)を避ける有効な手段となります。

財産形成のためのポートフォリオ運用を行う場合

安定的な財産形成を目指して、資産をいくつか組み合わせて保有する運用方法があります。国内株式・国内債券・海外株式(先進国・新興国)・海外債券(先進国・新興国)・不動産関連などの資産クラスごとに保有する比率を決めて、それに合ったファンドを持ちます。「日本株式と海外債券」など値上がりの原因が異なる資産を組み合わせるとリスクを打ち消す効果が期待できるほか、「債券の比率を大きくしてリスクを下げる」など各人の必要に応じてリスクの調節をすることができます。この方法では、バランスを重視するため、個々の相場を見ての投資判断は通常行いません。

このポートフォリオ運用を行っている場合は、1年に1回か2回、定期的に見直し、保有比率を元に戻します。例えば、日本株が大きく値上がりすれば日本株の保有比率が大きくなっているので、それを売却して、値下がりした別の資産を買い増して、最初に決めた比率に戻す作業です。

また、ポートフォリオ運用の応用で、経済環境の分析に基づいてシナリオを作り、資産の組み合せを考える投資家もいます。例えば、国内がインフレになりそうだと考えれば国内資産では株式を多めに、円安を予測すれば海外資産を多めに持つなどの調整です。その場合は、月に1回~数ヵ月に1回、シナリオの見直しを行って、環境に変化があれば新しいシナリオを作り、それに従った投資信託の入替えを行います。