償還
償還とは投資信託の運用が終了し、投資家にお金を返す日のことです。定期預金でいう満期のようなものです。投資信託の設定日(スタートの日)から償還日までを「信託期間」といいます。信託期間は、ファンドが設定される前に決められるもので、短いもので3年から、長いものでは無期限もあります。運用が始まる前にだけ購入者を募集する単位型は3~5年と信託期間の短いファンドが多く、運用中も自由に売買できる追加型では10年以上、最近では無期限が主流となっています。
リスクの高い投資対象なのに信託期間が短いと、十分な成果が得られないうちに償還を迎えてしまうことになりますので、投資信託を購入する際には、投資信託説明書(目論見書)等で信託期間を確認するようにしましょう。
償還を迎えると
償還日が近くなってくると、ファンドは保有している株式や債券などを売却し、未払い金を清算するなど償還に向けての着地態勢に入ります。そして、償還日には、それまでの投資元本に運用成果を加えた時価から諸々のコストを差し引いて最後の基準価額が計算されます。それが償還価額となりますが、日々の基準価額が円単位で計算されるのに対して、償還価額は円未満、小数点第2位(銭単位)まで計算されます。
それぞれ投資家は、償還価額に保有する口数をかけたものから税金を引いた金額を受取ることになります。償還金を受取る日は、償還日から起算して(償還日を1日と数えて)5日目が一般的です。新興国へ投資するファンドなどはもう少し日数がかかる場合もあります。
繰上償還(くりあげしょうかん)について
あらかじめ決められた償還日よりも前にファンドが償還されたり、信託期間を無期限と定められたファンドが突然償還を迎えることがあります。これを繰上償還といいます。
繰上償還となる場合の手順を説明します。まず、運用会社が繰上償還を発議します。そして、販売会社を通じて、ファンドを保有している投資家に「繰上償還(予定)のお知らせ」が郵送されます。この段階では、まだ決定ではありませんので、投資家はこれに対して意思表示をすることができます。
2007年9月29日(投信法の改正)以前に設定されたファンド
償還に反対する投資家は、「異議申し立て」の文書を運用会社宛てに送ります。反対しない場合は、何もアクションしません。異議を申し立てた投資家の保有口数が全体の2分の1を超えれば、繰上償還は見送られますが、超えなければ予定通り繰上償還は行われます。その結果は新聞公告などで通知されますが、異議を申し立てた投資家は販売会社やファンドを管理する信託銀行に対して売却を
請求することができます。
2007年9月29日(投信法の改正)以降に設定されたファンド
「繰上償還(予定)のお知らせ」の後に、販売会社から書面決議の用紙が送られてきますので、そこで償還の是非について議決権を行使できますが、書面を送らないと償還に賛成したことになります。議決権を持つ投資家の半数以上かつ投資家の議決権の3分の2以上の賛成があれば、償還することが確定します。この場合も、反対の意思表示をした投資家は販売会社やファンドを管理する信託銀行に対して売却を請求することができます。
ファンドの繰上償還条件を調べる
どちらにしても投資家が意向を表明する機会があるわけですが、過去に繰上償還が否決された例は数えるほどしかなく、また、反対した投資家は売却請求ができると言っても日々の基準価額をもとに売却されますし、継続保有をしたかったファンドなのに売却ができると言われても、さほど実のある制度ではないように思われます。
なお、「基準価額が12,000円を超えたら繰上償還」などと、最初から具体的に繰上償還される条件が決まっているファンドがあります。そのようなファンドが条件を達成して繰上償還される場合は、投資家の意向を訊かずに繰上償還となります。
繰上償還になる原因 こんなファンドには要注意!
ファンドが突然繰上償還の発議をされるのは、大抵、投資家からの解約によって純資産が小さくなった場合です。ファンドの規模が小さくなると、分散投資をするのが困難になったり、それ以降の解約のインパクトが大きくなり安定的な運用ができなくなります。また、信託報酬は、純資産総額に対してのパーセンテージで徴収されるため、ファンドが小さくなると信託報酬の金額も小さくなり、運用会社・信託銀行等はコストを賄うことが難しくなります。そのような状況になると、運用効率の面、運営の健全性の面から繰上償還を検討せざるを得なくなるのです。
繰上償還を警戒すべき純資産の水準としては、約款に数値で定めがある場合もありますが、一般に30億円を下回ってくると要注意レベルと言われます。10億円を下回ると大手運用会社では高い確率で繰上償還が検討される危険水域です。したがって、規模の小さいファンドは要注意です。
無期限に持っていたかったファンドが繰上償還されたとしても、その時の基準価額(時価)で償還されるので、経済的な損失が特段に大きいというわけではありません。元本割れ償還になった場合でも、同様のカテゴリーのファンドを新たに購入することでリカバリーは期待できます。しかし、次のファンドを探す手間、新しいファンドの申込みにかかる手数料など、資産運用上、それなりの負担は発生します。できれば、最初から、繰上償還リスクの大きくないファンドを選ぶ方が賢明といえるでしょう。