投資信託を知る

投資信託情報サイト

トップページ > 用語集 > 信託報酬

信託報酬

一般に、投資信託のコストには、購入する時に販売会社に支払う「販売手数料(申込み手数料)」と運用管理費用としてかかる「信託報酬」があります。どちらも資産運用の負担となるコストですから、投資家にとっては低いに越したことはありませんが、この両方のコストが低いと特に販売会社にとって採算の合わないファンドになってしまうため、なかなか両方が低いというファンドは見つけづらいものです。

では、投資信託選びの際にどちらに重点を置いて考えるべきでしょうか。販売手数料がかかるのは購入の時の1回だけです。それに対して、信託報酬はファンドを保有している期間中、継続的にかかります。例えば、信託報酬が年率1.5%だとすると、毎日、ファンドの純資産総額に0.0041%(1.5%を365日で割って1日分に換算した料率)を掛けた金額が差し引かれます。年率1.5%の信託報酬ということは、そのファンドを10年保有すれば、概算ですが、1.5%×10年=15%ものコストがかかることになります。そこで、長期に投資する目的で購入するファンドほど、信託報酬に気を配るべきであるといえます。

信託報酬が運用成果に与える影響

ファンドのコストは、運用成果にダイレクトに影響を与えます。ただし、アクティブ型投資信託(ファンドマネージャーが銘柄を選択して運用成果の向上を狙うファンド)では、運用の上手い・下手による差が大きく、仮に信託報酬が高かったとしてもそれをカバーするだけの運用技術と実績があれば、信託報酬の低いファンドよりも運用成果が良好であることもあります。その場合は、その優れた運用技術に対して高い信託報酬は妥当であると考えることができます。したがって、アクティブ型投資信託では信託報酬が運用成果を圧迫しているかどうかの検証は難しく(もちろん低い方がファンドマネージャーの負担は小さくなりますが)、過去に長い運用の実績があるファンドならば運用成績で選ぶのがよいでしょう。

一方、インデックス型投資信託(日経平均株価など株価指数と同じ動きを目指すファンド)では、どのファンドも一つの指標に連動する動きをさせるため、運用方法や運用成果に差が出にくいように見えます。しかしながら、検証してみるとその差が小さくないこと、継続的にかかるコストの重さがよく分かります。

実際のファンドを用いての検証

それでは、実際に存在するインデックス型投資信託とその運用実績を使って、信託報酬の違いが運用成果に及ぼす影響を検証してみます。どちらも、ノーロード(販売手数料無料)で、純資産総額も十分なファンドです。

  • 運用会社Dの日経225インデックスファンド: 信託報酬 年率0.84%
  • 運用会社Nの日経225インデックスファンド: 信託報酬 年率0.27%

まずは、それぞれを100万円買ったと仮定して、5年、10年保有した時の時の信託報酬金額を比較します。これは、信託報酬率から計算した概算金額となります。

【5年間保有した場合】
・運用会社Dの日経225ファンド  100万円× 0.84%×5年:42,000円
・運用会社Nの日経225ファンド  100万円× 0.27%×5年:13,500円  ☆28,500円の差

【10年間保有した場合】
・運用会社Dの日経225ファンド  100万円×0.84%×10年:84,000円
・運用会社Nの日経225ファンド   100万円×0.27%×10年:27,000円  ☆57,000円の差

次に、100万円ずつ買って保有した場合の過去5年、10年の実際の運用実績を比べてみます。
運用実績は年率(1年あたり)で表示します。

【5年間保有した場合】
投資元本×上昇率(年率)×年数=利益の金額
・運用会社Dの日経225ファンド  100万円×  8.98%  ×5年:449,000円
・運用会社Nの日経225ファンド 100万円×  9.66%  ×5年:483,000円 ★34,000円の差
(同期間の日経平均株価の上昇率は: 年率9.4%)

【10年間保有した場合】
・運用会社Dの日経225ファンド   100万円×4.06%×10年:406,000円
・運用会社Nの日経225ファンド   100万円×4.67%×10年:467,000円  ★61,000円の差
(同期間の日経平均株価の上昇率は: 年率3.9%)

※データ:2014年8月末時点。
モーニングスター社のサイトに掲載されたトータルリターンの値を元に計算しています。

このように、信託報酬率が低いNのファンドの優位性が見られます。信託報酬率の差は「0.57%(0.84%-0.27%)」と小さく見え、また年率パフォーマンスの差ではあまり違いが実感しにくいと思われますが、実際に長期のパフォーマンスとして運用成果を金額で比べてみると違いは小さくないことが分かります。同種同類のファンド、特にインデックス型投資信託を購入する際には、是非、コストの情報のなかでも信託報酬の率に注目したいものです。